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世良さんのアパートからホテルまで、急いでも車で二十分はかかる。すぐにここに到着するような言い方だったが、どういうことだろう。そう思いながらラウンジに戻ると、五分ほどで世良さんから電話があった。電話に出ると、『正面玄関にいるよ』と返ってきたのでびっくりした。
「随分と早いな」
父が腕時計を見ながらつぶやく。
「近くまで来ていたみたい」
「彼のことだから、この辺をうろうろしていたんじゃないか?」
「そうなのかな」
わたしが首を傾げると、母が「そうに決まってるわ」と楽しそうに笑った。
「どこまで心配症なんだろう」
結局、世良さんを一日振りまわしてしまった。仕事も途中で切りあげさせてしまったし、本当に申し訳ない。
「亜矢、あなたは愛されているのよ」
「それは、わかってるんだけど」
「今のあなたはとても穏やかな顔をしてるわ。早く自分の気持ちに気づけるといいわね。世良さんを待たせちゃ悪いわ」
「えっ……」
母の言葉に、わたしはハッとした。
お母さんには、わかるの? わたしが見つけられないわたしの本音が見えるの? 世良さんを信じたら、わたしは今度こそ幸せをつかむことができるのかな?
でもその答えは自分で見つけないといけない。
わたしも世良さんを待たせたくない。それとも近いうちに、わかるのだろうか。
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