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めんつゆを作っているうちに、お蕎麦がゆであがった。氷水で締めて、それぞれのお皿に盛りつける。世良さんの分を大盛りにして薬味のネギとワサビも添えた。
「よし、完成」
と、ひとり言を言ったら、「できたの?」という声が返ってきてびっくり。
「はい。今、お持ちしますね」
「じゃあ、テーブルの上を片づけるよ」
ノートパソコンの電源を落とし、散乱していた資料を集めると、トントンと角をそろえて封筒にしまう。その分厚い封筒と一緒にパソコンをリビングのテーブルに置きにいっている間に、わたしはダイニングテーブにお蕎麦を並べた。
「おいしそうだね」
ダイニングに戻ってきた世良さんは席につくと、「いただきます」と手を合わせた。昨日の夜も思った。「いただきます」「ごちそうさま」という言葉は、なんて素敵な響きなのだろうと。ひとりでは味わえない喜びがわたしの頬をゆるめた。
「どうかした? ニコニコしちゃって」
「人にごはんを作るって楽しいことなんですね」
「相変わらず、かわいいこと言うね」
「そんなことないですよ」
ズルズルッと遠慮なくお蕎麦をすする音がする。おいしそうに食べてくれる姿を見ながら、わたしは実家のことを思い出していた。
「うちの母もそうなのかなって。あんな母ですけど、あれでもかなり家庭的なんですよ」
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