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「な、なんでしょう?」
たどたどしく、声も上ずりそうになった。
「自分勝手なのはわかっているし、こんなときにこんなことを言うのも卑怯だと思ってる。でもこのチャンスを逃したら一生後悔すると思うから言うよ」
ひたむきな姿にわたしも心を開く。世良さんがなにを言おうとしているのかわからないけれど、聞いてしまったら従ってしまいそうだ。
しかし、それは想像を超える提案だった。
「しばらくの間、この部屋で一緒に暮らさないか? 僕のことを知るには手っ取り早いと思うんだ」
「えぇっ! 一緒に? そんなこと、急に言われても……」
「もちろん、亜矢ちゃんが嫌がるようなことは絶対にしない。無理やり迫らないと誓うよ」
「でも……」
「大久保さんのマンションからだと通勤が大変だろう?」
「それはそうですけど……」
三日間だから比較的気楽に生活できたのに。これからも続くとなると、急にドキドキしてくる。
だって世良さんはやっぱり男の人で、今みたいに真剣モードで話しかけられると、変に意識してしまう。
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