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だけど嫌じゃない。そんなふうに思うわけない。あふれてくる感情が恋や愛なのかはまだわからないけれど、たしかにわたしは自らの意思でここにいる。
「布団はいつ買いにいくんですか?」
きっと、こんな状況を望んでいたのだ。一緒に暮らせば、わたしが知りたいわたしの本音が見えてくるはず。それを確認しないと結婚という領域に踏み込めない。
「さっそく今日にでも行こう」
「わかりました」
「亜矢ちゃんのご両親にも了解をもらわないといけないな」
「電話しておきます」
「僕がしてもいい? でも同居を延長します、なんて言ったら、さすがに怒られるかな?」
ほんわかと気負いなく言う。そんな世良さんがわたしにはとても頼もしく思えた。
実直さのなかにユーモアを織り交ぜてくる、その気遣いがあなたの強さだと知りました。やさしさは強さだということをまざまざと感じ、笑いかけてくれる世良さんを前に、わたしはやっぱり泣きそうです。
こんなふうに愛してくれる人はいなかった。わたしはこの一年、世良さんのなにを見ていたのだろう。どうして気づけなかったのだろう。
いや、もしかすると気づいていたのに、自分でそれを認めたくないと思っていたのかもしれない。
恋をするのが怖かった。だから好意を持ってくれることに気づいてしまったら、わたしはその恋から逃げ出してしまっていたような気がする。そうなりたくなかったから、本能的に認めなかったのだろう。
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