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第四十二話 揉み消された灯火
先ほどと様子が違うアレアに、サルダンの手が瞬間的に止まる。そして目の前のアレアの姿を俄に驚いたような顔で見ていた。
アレアは体を丸め込み、うまく息がつげずに荒く短い呼吸を繰り返し胸元に爪を立てている。
「な、何だ……」
動揺の色を露にしているサルダンをよそに、アレアの視界が霞み、意識が遠くなっていく。
まさか、こんな事が起きるだなんて……。
幸せな時間を掴んだと思えた瞬間に崩れ去った現実に、悔しさと悲しさで涙が溢れて止まらない。
そこへリガルナが外から戻ってくる。アレアの為にと取りに行っていたのは、果実だった。
「ひぅ……っ」
どんなに苦しくても、意識が朦朧としていても、リガルナが戻ってきた事が分かったアレアは、こんな姿を彼に見られたくない一心で自分の身体をきつく抱きしめた。
「……!?」
戻ってきたリガルナは、目の前の光景に愕然とした顔を浮かべた。アレアは青ざめた顔で横たわり、その横には上半身裸の見ず知らずの男が一人。
サルダンもまた、戻ってきたリガルナを見た瞬間大きく目を見開いた。
「あ、赤き魔物っ!?」
「……っ!」
サルダンのその目は恐怖の色をちらつかせる。
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