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息を殺し、べリアルとともにいる人物の答えを待つ。
協力を求めるべリアルに賛同するのなら、その人物もべリアルの仲間ということだ。もし拒否したら──
拒否した場合、どうなるのだろう。マージの称号を剥奪されるのだろうか。あるいは宮廷からも追放されてしまうのだろうか。それとも秘密裏に──
ふと浮かんだ己の考えに、イーリスは思わず身震いした。いくらべリアルがいけ好かないからと言って、そこまで悪者に仕立てあげるのは行き過ぎだ。
(大神リアーよ、一瞬でも愚かな考えを持ってしまった私をどうかお赦しください)
胸の前で手を組み、懺悔したその時だった。
「俺は魔導師と認められてから、まだ半年も経ってない。なのになぜ俺を選ぶ?」
なめらかな、耳に心地よい声だった。少年の声ではない。かといって年寄りでもない。父やべリアルよりも随分と若そうだ。
「おまえは他の者と違い、自ら志願してアプレンティとなったのではない、この私が見つけだしたのだ。おまえには才能があるのだよ」
「そうですか」
プルミエ・マージにべた褒めされているというのに、喜びも感動もへったくれもない返答だった。一体どんな人物なのか、まったく見当がつかず、イーリスは顔を歪めた。
「おまえなら──いや、おまえしかいない、この私の右腕となれる者は」
「別にあんたの右腕になんかなりたいと思わないな」
青年の、あまりに無礼な物言いに、別の意味でどきどきしてきた。プルミエ・マージは魔導師のなかの魔導師、ジェルサ・レーアにただひとりの存在であり、王族とて敬意を払っているというのに。
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