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「なぁアル、この話本当だと思うか?」 カイが恐る恐る聞いてきた。 「作り話にしちゃできすぎてないか?婆さんに聞いてみようよ」 「そうだね、俺婆さん探してくるよ」 そう言うとカイは婆さんを捜しに走って行った。 ミイ婆さんは図書館にある全ての本を把握している。機械など無くても、書いた人物、内容、書かれた時期など、全てを知っている。そして唯一信頼できる大人なのだ。 カイが婆さんを捜してる間、僕は続きを読むことにした。 ジタンは次から次へと花を咲かせては自分だけが幸せになれるように願いをかけた。ずる賢い彼は、種を残すことも忘れなかった。 豪邸を手に入れ、金を手に入れ、たくさんの綺麗な女達に身の回りの世話をさせ、召使い、執事、シェフ、庭師…。いつしか国一番の大金持ちになっていった。 そんな彼の富の秘密を知るものは誰一人としていなかったはずなのに、ある日政府の役人が彼の家へとやってきた。 用件は『幸福草』の種を譲って欲しいと言うものだった。 ジタンはなぜ幸福草の話がばれたのか不思議でならなかった。しかし、よくよく考えると、彼はたくさんの女達の中でも一番惚れていた女、メリーにだけ幸福草の話をしたことがあったことを思い出した。
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