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メリーは政府の役人とも繋がりがあり、ジタンが働きもせずに巨万の富を得た秘密を役人に全て話してしまったのだ。 役人の持ちかけた話は、ジタンにとって悪い話ではなかった。種を譲る代わりに、自分の部下である政治家の政治権力をジタンに全て譲るというものだった。つまり、役人の部下が全てジタンの部下になると言うことで、思うがままに操ることが出来るというのだ。 思ってもない好条件に、深く考えもせずにジタンは10粒もの種を譲ってしまったのだった。 その後、種を譲り受けた役人は、国一番の権力者として王の側近となり、政治はもとより法律、教育制度、全てを変え、隣国に攻め入っては我がものとし、周辺国は全て自国のものへと変わり、ついには王の座まで自分のものにしてしまったのだ。 そのころジタンはというと、王になった役人の側近となり、密かに王の座を狙っていた。 いつしか幸福草の種の話は一般市民の耳にも入り、周辺諸国にも話が広がり、幸福草の種にまつわる噂話が広がり始めていた。 その頃、街の中で聞かれる噂は幸福草のことばかりだった。 <幸福草を手に入れれば不治の病が治る> <幸福草さえあればお金持ちになれる> <幸福草で不老長寿になれる> どこかから漏れた噂は噂を呼び、本物の幸福草とは似てもにつかない偽物が幸福草だと高値で売買されたり、噂だけが一人歩きして幸福草の噂を聞けばみんなこぞって探しに出かけ、誰かが手に入れたと聞けば奪いに行き、街はどんどん荒れていった。 綺麗な町並みが自慢だった街もあっという間に廃れ、廃墟が増え、観光客や商売人をはじめとする人という人は次第に寄りつかなくなって行った。街に残ったのはもとより居たわずかな住人と野良猫、野良犬ばかりだった。 そんな中、ジタンはついに国王になった。その頃にはエスタ国は世界でいちばん大きな国になっていた。
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