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「アル、婆さんを連れてきたよ」
カイが小走りで駆け寄る後ろをゆっくりと歩いてくる小さな婆さん。
「また幸福草のことを聞きに来たのかい?」
婆さんは曲がった背中を少し伸ばし僕を見た。
「そうなんだ。この本なんだけど、本当の話なの?」
「あぁ、見つけたのかい。…あんたたちがそれを見つけた時には話そうと思っていたんだけどね、それは本当の話だよ」
婆さんは少し考えてから僕の遙か後方を見つめるようにして話してくれた。
「なんで本当の話だってわかるの?」
ボクが言いかけた言葉をカイがそっくり言ってくれた。
「その本を書いたのは、私の親友だったサダバだからよ」
一瞬耳を疑った。目の前にいる婆さんの親友がこの本を書いた?
「だってこの本、何年前の物なのさ?」
僕が聞くと婆さんは笑った。
「私はね、もう1000年以上も生きているのよ」
僕もカイも信じられなかった。
「驚くのも無理はないけど、そこにあるココという長女、それは私のことなんだよ」
婆さんは続けて言った。
「今考えれば実に愚かで浅はかだったわ、自分の弟がしでかしたことを、自分の目で見届けなければならないと思った私は、自分自身に不死の願いをかけた。おかげで私は死ぬことが出来ない人間になってしまったのよ。そして親友でもあり人生の師でもあったサダバにこの本を書いてもらったの」
「なんでもっと早く言ってくれなかったの?言ってくれればこんなに探さなくても良かったのに」
カイが言う。僕も思った。
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