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「ろくに努力もしないで得た知識はすぐに薄れる。逆に苦労して得た知識は決して薄れることはない。私はね、今の考えることも知らない人間どもとは違うあんた達には努力をして欲しかったんだよ。私が教えることは容易いが、自分で得た知識の方が何倍も身に付くだろう?」 婆さんはきっぱりと言い切った。 「そう言われればそうだよね」 「うん、そうだね」 僕らは婆さんの言葉に納得した。 「その本の最後のページを見てごらん」 婆さんに促されるまま最後のページを開く。そこには後から付け足されるように短い文章が書いてあった。 『永遠の命を得たココ・ミーガルへ愛を込めて。サダバ・ケイル』 婆さんに宛てたサダバからのメッセージだった。 「ねえ、婆さんは淋しくないの?」 僕は聞いた。 「そうねぇ、淋しくないって言ったら嘘になるけれど、今はあんた達が毎日のように来てくれるから淋しくないね」 婆さんはそう言って優しく微笑んだ。 「でも…これまでは人が愚かに無能に衰えていく様を見続けなければいけないのかと思ったら悲しくてねぇ、あの時の自分を恨んだよ。永遠の命なんか要らないってね」 婆さんは淋しそうな顔をした。 「僕らは居るよ、婆さんの傍に」 カイがちょっと照れくさそうに、でもしっかりと言った。 「ありがとう、あんた達は優しくて賢いねぇ、まかり間違っても奴らのように成り下がったらいけないよ」 僕らの頭を撫でながら悔しそうに言った。 婆さんはきっと今まで数え切れないほど悔しい思いをしてきたに違いない。
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