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ろくでなし、とか、役立たず、とか罵られるのは日常茶飯事ですでに痛くも痒くもない。もう慣れた、というよりも、塵ほども響いちゃいない。彼らの口からはほんの数種類の言葉しか出てこないので、ボキャブラリーの少なさには飽き飽きしている。あんな中身も重さもない空っぽな言葉、真に受ける方がバカバカしい。 しかしさすがに政府の頭でっかちな大人たちは、僕の周りにいる脳みそまで筋肉でできているような足りない大人たちとは違っていて、よく見ている。 今までに僕らのような痩せっぽちで、すばしっこい子どもは一人も居なかったもんだから、従順でない痩せっぽちな子どもは厄介者として見てるらしいことだけは子どもの僕にも痛いほどよくわかった。 「出来損ない!」 よく言われる。親にも兄弟にも。別に悲しくはない。僕は自分で自分を出来損ないと思ったことなどないから。 むしろお前らのほうが出来損ないだ 脳みそを働かせることも知らない、ただ生きていくために、よくわかってもいないシアワセになるため、食べ物を奪い合い、幸福草の種を奪い合う。我こそが一番、隙あらば家族兄弟ですら裏切り、傷つけあう。僕はそんな考えにはうんざりだ。 僕は仲のいいカイと毎日のように図書館に行く。僕らの住むBエリアにはそんなけったいな物はない。だからお隣のAエリアまで出掛ける。 Aエリアには本当にほんの少しだけ金持ちならぬ物持ちの奴らが住んでいると言われているが、僕からしてみればBエリアと大差無いように思える。考え方だとか質、行動はまったく同じに見える。
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