記憶は記録じゃない

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 あいつと出会ったのは小学生一年生のときだった。  やんちゃとかいう言葉では足りないくらい、元気が有り余っているやつで、なんでも器用にこなすやつだった。  休み時間に入っては俺たちと一緒にやれ野球だ、やれサッカーだと走り回っていた。  当時の俺は自分より強いやつが許せなくて、あいつの後ばかり追いまわしていた。 「いっちゃんまだやるの、僕はもう疲れたよ」  当時、あいつの一人称は僕であった。  あいつが勝ち続けるから、俺はあいつがあきれるくらい勝負を挑み続けるのだ。  放課後には公園で遊ぶこともあった。  いつものように男どもで集まり、そんな中にあいつがいた。  鬼ごっこをすれば執拗にあいつを追いかけ、サッカーをすればあいつがボールを持った瞬間にプレスをかけに行く。  あいつはにやりと笑って躱していく。おれはそれを追いかけた。  くたくたになれば近くの自販機でジュースを買う。  疲れた体に冷たくて甘いものを一気に体に流し込むのはそれでいて爽快だ。  だから俺はあいつにも差し出すのだろう。 「残り、いらないからやる」 「ほんとに。ありがとう」  あいつは笑顔で受け取り、汗を片手で拭いながら受け取るのだ。  
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