記憶は記録じゃない

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 当時、あいつは女子と仲が良かった。  小学校低学年の性差など確かにたかが知れているかもしれないが、確かに存在するのだ。  男子は女子に手を上げることを忌避するし、女子は男子を少し敬遠気味だ。  まあ、女子に手を挙げた男子は女子グループ全体から敵認識される。それを本能で知っているためかもしれないが。  挨拶くらいは当然する。おはようといえばおはようと返ってくるがそれまでだ。  日常会話などどんな話をしたのかすら覚えていない。  だが、あいつは女子と一緒にいるのをよく見たし、楽しそうに話していたのを覚えている。  女子がキャーキャーと騒ぐ輪の中であいつも一緒になって騒いでいた。  ま、すぐに呼びつけて外に遊びに行くんだがな。  学校が終われば、俺はあいつと二人で帰っていた。  何を話していたんだかはもう覚えていない。でも楽しかったことは確かだ。  親によく言われたもんだ。 「危ないから帰るときは二人で手をつないで帰ってくるのよ」  だから、だから俺とあいつは二人で手をつなぎながら帰っていたのだ。  そしてランドセルを放り出したらすぐにまた、公園へと走っていく。  家からサッカーボールを持ち出して。
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