記憶は記録じゃない

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「あんた、いつまで寝てんの。早く着替えて下りてきなさい」  母親の声で目を覚ました。  なんだか懐かしい夢を見ていた気がするが何の夢だったか覚えていない。  あくびをしながら一回のダイニングへと降りていく。  ダイニングでは父親が去った後と思しき空のマグカップとあきれた様子で待ち構える母親待ち構えていた。 「今日から始業式でしょ。昨日ひかるちゃんを送るように言っておいたのにいつまで寝てんの」 「そんな話あったっけ」  コップに牛乳を継ぎながら寝ぼけ眼で答える。  その時、家のインターホンが鳴った。 「あんたが起きてくるの遅いからひかるちゃんが来ちゃったじゃない。さっさと顔洗って着替えて下りておいで」  母親の剣幕に押されて、慌てて注いだ牛乳を飲み切ると洗面所へと急いだ。  顔を洗って階段を上がっていると後ろからひかるちゃんと母との会話が聞こえる。 「お久しぶりです。おばさん」 「あら、ずいぶん大きくなったわね。一誠(いっせい)たらまだ着替えてないのよ。上がっていいからちょっと待っててもらえないかしら」  おじゃまします、という声を聴きながら俺は急いで二階へ上がった。  着替えて下りてくると一回のダイニングではひかるちゃんが俺を待っていた。 「あんた、何ぼーっとしてんだい。小三まで一緒だったひかるちゃんでしょ」  母親にせかされておれはあわてて挨拶をする。 「お、おはよう」 「…おはよう。いっちゃん」  七年だ。約七年以上会っていなかった友人とどう接しろというのか。 「ほら、遅刻しないようにさっさと行きなさい。あんたはともかくひかるちゃんを転校早々遅刻させるんじゃないよ」  俺たち二人は母に追い出されるようにして家を出た。  駅までの道は二人とも無言だった。  当たり前だ、七年という時間は子供には長すぎる。それに…。
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