【ペット契約】始まります 

2/22
2699人が本棚に入れています
本棚に追加
/195ページ
昼間の仕事は18時に終わって、そこから歓楽街に移動を伯母さんが経営しているガールズバーに向かう。私のシフトは、毎週金曜日に入れてもらった。営業は19時からなので、バーに着いたら急いでメイクを直し、このバーの制服でもあるあのコスチュームに着替える。  バニーガールの衣装にウサ耳をつけて、鏡の前に立ち最終チェックをする。だけど、どうしてもこの衣装に身を包むと……ついこの間、副島課長に抱かれた時の事を思い出してしまう。 ここの制服はワンピースタイプ、副島課長が用意していたのはレオタードタイプ。鏡を見ても頭の中で振り返っても少し毛色の違う「バニーガール」なのに。…どうしても、勝手に体があの時の快楽を思い出して、じゅん、と下着の中が潤ってきてしまうのだ。  頭をブンブン横に振って、体中を這いまわる副島課長の手の感触を振り払う。頬を叩いて休憩室を出ようとすると、伯母さんとばったり遭遇した。 「あらナッちゃん~!ちょうど良かった」  このガールズバーで働くときの源氏名は、「ナツミ」にしていた。これは学生のころから使っている源氏名で……本名が「はる」だから、その次の季節の、夏。自分でも安直な名前の付け方だと思うけれど、他に思いつかなかったから仕方がない。 「ん? 何かあったの?」  「ナツミちゃんに相手して貰いたいっていうお客さんがお見えになってて、ちょっと行ってもらっていい?」  俗にいう、『指名が入った』ということだ。 ガールズバーはキャバクラではないので、特定のお客さんに接客することは法律で禁止されているらしい。だからこそ法の目をかいくぐった、暗に示すような言葉を使っている。 「初めて来るお客さんなんだけど、いいかな?」 「はい!」 「良かった。よろしくねぇ」  伯母さんは私を激励するように背中をパンと強く叩いた。昔からだけど、伯母さんの力は強すぎるのだ。少しひりひりとする痛みを背中に感じながら、カウンターに一人で座るお客さんの元に向かう。金曜日のお店は夜が更けていくにつれて、少しずつ混み始めていた。  でも、初めてお店に来るに女の子を指名するなんて、とっても珍しいお客さんだ。ホームページで見てきたのかな? 私はぼんやりとそんな事を考えながらカウンターに向かっていく。
/195ページ

最初のコメントを投稿しよう!