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私はその資料をすでに一つにまとめていた会議資料の中に入れ、コピー機に乗せる。窓の外を見ると、もう外はすっかり日が暮れて暗くなっていた。今から始めて、一体いつ終わるのだろうか? 溜息をつきながら、私はコピーボタンを押した。資料がどんどんコピー機に吸い込まれていく。
「はる、最近元気?」
「え? 何が?」
「ほら、前に飲みに行った後、何回か見かけたけどなんか元気ない感じだったから……」
「そう?」
まあ、あの直後色々あったので……と口を開こうとして、ぐっと噤む。由紀子は小さな声で、私の耳元でそっと囁く。
「なんか、最近、色っぽさっていうの? ……艶でてきたっていうか?」
「はあ?!」
私の大きな声が、フロア中に響いた。じろりとした質問がこちらを向くので、小さく頭を下げた。しかし、由紀子は楽しそうに話を続ける。
「まさか、さっそく彼氏できたとか?」
私と課長のあの『ペット』と『ご主人様』という不思議な関係が始まってから、もうすぐ一か月経とうとしていた。毎週金曜日、課長はふらっと店にやってきて少し冷やかしてから、ホテルに私を連れ込みそこで私を抱く。
そして、彼があの時に言った「お小遣いをあげる」という言葉の通り、ホテルから帰るときに封筒に入った5万円をポイっと渡される。たったそれだけの関係だ、だから私は由紀子の『彼氏』という言葉を、首を横に振って否定した。
「なーんだ、でも良かったかも」
「何が?」
「いや……あのね、うちの部署にいる戸川さん、知ってる?」
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