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たくさん……という訳ではないが、誕生日やクリスマスなどのイベントの時は、高級ブランドの最新バッグやアクセサリーをもらうことは多かった。でも、それも『仕事』の内。そうやって尽くしてくれるお客さんの中で、お付き合いしたいと思ったり……えっちしたいと思うような人もいなかった。
「はるには尽くす器も甲斐性もないんだし、いっそ尽くされてみたら?」
「でも、そういう人は好みじゃないっていうか」
「一回、そんなプー太郎じゃなくってはるのこと可愛がってくれる年上の男と付き合ってみたら印象変わるかもよ?」
「でも、そんな簡単に年上って言われても周りにそんな人いないし……」
「同じ課の人とかは?」
私はまた首を横に振った。由紀子は『職場恋愛とか気まずいか』なんて笑ったけれど、そうじゃない。……私の中で、同じ課の中で恋愛対象とする人がいないのだ。
私が深~いため息をついていると、由紀子は腕時計を見て、あ!と声をあげた。
「私明日早いからそろそろ帰るね」
私も由紀子に倣うように時計を見る、時刻は21時を指していた。
「仕事、忙しいの?」
「うん、今度、ここの市が主催するご当地グルメイベント、うちのチームで運営することになったから……割と忙しめかな?」
「すごーい、いいなぁ」
「はるも、早くイベント企画に異動になればいいね」
由紀子は伝票を持って立ち上がった、私もカバンから財布を取り出しながら立ち上がろうとすると……由紀子がそれを制した。
「いいよ、おごってあげる。今お金ないんでしょ?」
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