或る猫の噺 壱

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さて。 やった奴はね、見つかったんだ。野良猫の繋がりはすごいよ。皆総出で探してくれたさ。なんせ次は自分とこかもしれんのだから。 けどな、相手は人間なんだ。戦って勝てるか。いいや、火を見るより明らかさ。勝てるわけがない。絶望したよ。食事だって、食べられなかった。生きることが、億劫になった。 だから、だからな。 あっしは死んだんだ。 死んだんだよ、お兄さん。 なのに、目が覚めたらここにおった。 無念を晴らせと、神か仏が言ってくれとるんだろう。 ああ、無駄だよ。お兄さんはあっしを殺せない。死んどるんだから。 あっしらには天国も地獄もないが、人間にはあるんだろう? できれば、地獄にいっとくれ。それで満足はできんが、少しばかり憂さがなくなる。 お兄さん、アンタはな。 アンタが殺した猫の家族に呪い殺されるんだ。あっしらの無念を特と味わって、苦しんで死ぬがいい。 おや、見られてしまったかい。 なぁに、ここで起こったことは夢、そう、全部夢さね。 ……もし、覚えてくれていたなら。 そこにな、猫の死体がある。三体だ。無理にとは言わんが、少しでも思うところがあるんなら、どこでもいい。三匹一緒に、埋めとくれ。
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