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「涼弥!!(りょうや)」
高槻涼弥(たかつき・りょうや)
遠くの方で右手をあげながら僕の名前を呼び誰かが走ってくる。
海藤一馬(かいとう・かずま)だ。
「はぁ…はぁ…お前これ。」
僕に追いついた一馬は息をきらしながら、右手に握っている何かを差し出した。
「何これ?ボタン?」
差し出された"それ"を僕は受け取り、人差し指と親指に挟んで見た。
黒い色に細かな彫刻が施されている。
何だろう?
羽を広げた蝶の様に見えるけど…何だか別の様な生き物にも見える。
何か命を感じるって言うか…不思議な感じだ。
僕は一馬の顔を見た。
すると一馬は声を出さず、うんうん頷く。
ボタンに間違いないみたい。
「で、これが何?」
見た事もないボタンを渡され、意味が解らず尋ねた。
「それ…お前のだろ?」
ボタンを持つ僕の手を指差して言う。
「いや、僕のじゃない。」
言い、僕は一馬の手を取ってボタンを返した。
本当に見た事がない。
制服のボタンでもないし、学ランのボタンでもない。
それに何だか時代を感じる。
デザインが古いとか汚れてるからとかではなく、ただそんな感じがする。
あんなに細かな彫刻を施してるボタン、テレビでだって観た事がない。
売られてるとしたら、かなり高額な値がついてそうだ。
「あれ~おっかしいなぁ…。」
ボタンを見ながら頭を掻いて、一馬は言った。
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