ボタン

2/4
13622人が本棚に入れています
本棚に追加
/380ページ
「涼弥!!(りょうや)」 高槻涼弥(たかつき・りょうや) 遠くの方で右手をあげながら僕の名前を呼び誰かが走ってくる。 海藤一馬(かいとう・かずま)だ。 「はぁ…はぁ…お前これ。」 僕に追いついた一馬は息をきらしながら、右手に握っている何かを差し出した。 「何これ?ボタン?」 差し出された"それ"を僕は受け取り、人差し指と親指に挟んで見た。 黒い色に細かな彫刻が施されている。 何だろう? 羽を広げた蝶の様に見えるけど…何だか別の様な生き物にも見える。 何か命を感じるって言うか…不思議な感じだ。 僕は一馬の顔を見た。 すると一馬は声を出さず、うんうん頷く。 ボタンに間違いないみたい。 「で、これが何?」 見た事もないボタンを渡され、意味が解らず尋ねた。 「それ…お前のだろ?」 ボタンを持つ僕の手を指差して言う。 「いや、僕のじゃない。」 言い、僕は一馬の手を取ってボタンを返した。 本当に見た事がない。 制服のボタンでもないし、学ランのボタンでもない。 それに何だか時代を感じる。 デザインが古いとか汚れてるからとかではなく、ただそんな感じがする。 あんなに細かな彫刻を施してるボタン、テレビでだって観た事がない。 売られてるとしたら、かなり高額な値がついてそうだ。 「あれ~おっかしいなぁ…。」 ボタンを見ながら頭を掻いて、一馬は言った。
/380ページ

最初のコメントを投稿しよう!