173人が本棚に入れています
本棚に追加
廊下から漏れる明かりだけで仄暗くなった部屋に急な静寂が立ち込める。
大パノラマの窓から拝む見事な程の夜景がより一層クッキリと映し出されて思わず息を呑む。
だがそれも束の間、暗闇の静寂の中に二人きりというのが何とも居心地の悪く思えたのだろうか、氷川がすぐ脇へと腰掛けてきた気配で冰はおぼろげに瞳を見開いた。
「おい、眠いのか?」
初めて訪ねた他人の部屋で、その部屋主に寝入られてしまっては手持ち無沙汰この上ないのだろう、悪いことをしてしまったかと苦笑する。
「悪りィ、やっぱちょっと飲み過ぎたかな。一瞬寝そうになった」
笑いながらそう言うも、何だか氷川の様子が変だ。酷く仏頂面で、機嫌の悪そうに眉根を寄せている。
「ごめ! お前、どーする? 帰るんなら階下まで送ろうか? それとも泊まってくか?」
軽い気持ちでそう訊いた。だが、氷川が機嫌の悪そうにしていたのは、そこではないらしい。どうやら恋人との経緯が気に掛かるのか、
「てめえが泣く程落ち込むなんてよ。らしくねえぜ? そんなにショックだったわけか?」
そう訊かれ、今度は冰の方が眉根を寄せて氷川を振り返った。
「しつけーよ。だから泣いてなんかねーってば。俺、今日結構飲んだしちょっとノビてえ気分なのー」
最初のコメントを投稿しよう!