Wild Passion

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「は、どうだか!」  呆れた調子で苦笑気味の氷川に、 「ま、仕方ねえだろ。俺、コイビトに振られたのつい昼間のことなんだから。そりゃちっとは落ち込みもするっしょ? なんせ酷え台詞でバッサリ捨てられたわけだしよー……」  別れた経緯など話すつもりでもなかったが、何となく口を滑らせてしまいたくなったのも不思議だ。学生時代を同じような環境で過ごしたこの男になら、開けっ広げにこんな話をするのも悪くない、そんな思いが過ぎったのは確かだった。  それをうっとうしがるわけでもなく、どちらかといったら話の続きを聞きたげな表情でこちらをチラ見している氷川の様子にも、ヘンな依頼心ともいうべき感情が湧き上がる。  格別相談に乗って欲しいわけではないが、何となく事の成り行きを聞き流してもらうだけでも心が軽くなる、そんな気がしていた。  やはり酔っていたせいもあるだろう。普段なら他人に弱みを見せることなど滅多にないというのに、自ら進んで誰かに頼りたい、寄り掛かりたいだなんて随分と可笑しな夜だ。冰はそんな自分に半ば呆れながらも、 「俺ね、ケモノなんだ――」  自分でも無意識に、思わず『どういう意味だ』と訊き返したくなるような言葉をぶつけていた。
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