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「……獣だ?」
案の定、ワケが分からないと言わんばかりの表情で興味有りげに見つめてくる氷川の視線に満足げな気分にさせられて、ツラツラと続きを話したくなる。この際、この男にすべてをさらけ出してみるのも悪くはない、そんな積極的な気分になって先を続けた。
「なんか俺ね、しつけーんだと!」
「しつけえ? 性格がか?」
「さあ、それも有りかもだけど。セックスが動物的で嫌なんだとよ」
「何だ、それ――」
「そんでもって自分勝手で傲慢で、だから嫌いになったってさ。そこまで堂々言われりゃ、悲しーなんて気も失せちまう。挙げ句は他に好きな男ができたからそっちに鞍替えするってよ。あんまし見事過ぎて、泣きたくたって涙も出ねーわ」
わざと深い溜息をつき、おどけながらも苦笑いを隠せない。そんな仕草が氷川の感情の何に何をどう焚き付けたというわけか、
「だからってそんな堂々……俺の前で腹見せるなんて、あの頃じゃ考えらんねえな」
少々不機嫌そうにソッポを向きながら、舌打ちをしてよこす。
そんな様子を可笑しそうに見つめながら、
「今はあの頃とは違うだろ? てめえの前で腹見せてたってどうってもんでもねえじゃん」
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