Wild Passion

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「……っ畜生ッ、好き勝手抜かしやがる……! 何なんだよ一体っ!」  馴染みのバーでマスターに管を巻いて深酒、店を出てからもムシャクシャした気持ちは一向に治まらない。道を行くすべての人々にさえ苛立ちが募るようだった。  頃は世間の学生たちが夏休みに入ったばかりの、本来楽しいはずのミッドサマーナイトだ。それなのに、何故自分はこんな惨めな思いと共に独りで不味い酒なんぞを煽らなければならないのか――、すれ違い様に聞こえてくるのは会社帰りの仲間内らしい数人のグループの楽しげな会話、熱々カップルの嬉しそうな声、声、声――誰も彼もが幸せそうに思えて、すべてが嫌になる。『お前ら全員邪魔だ』とばかりに、大袈裟なくらいのデカい態度で歩道をふらつき歩いていた。 ――その時だ。急に目の前に現れた何かにドスンと肩をぶつけて、不機嫌をそのままに冰はそちらを睨み付けた。見れば五~六人の若い男が対抗意識丸出しでガンを飛ばしている。 「おいオッサン! 何処見て歩ってんだよー?」  顎を突き出し、威嚇し、ヤル気満々といった調子で凄んでくる。そんな会遇に冰の苛立ちは頂点に達してしまった。
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