第1章

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 それから儀式は、行われなくなりました。猫を喰らった少女を悼もうと、母と村長が声を上げたのです。それから何百年も経ち、村もなくなりましたが、今でもその村があった辺りには災いは起こっていないそうです――。 ***** 「でもさあ、それってお伽噺だろ?」 翔太は馬鹿にしたように笑った。私は急に顔が熱くなる。 「でも、ばあやが言ってたもん!」 「あはは、純粋だな! お前本当に十歳かよ……うわっ」 突然目の前を横切った黒い影に、二人して立ち止まった。心臓がバクバクしている。顔を右に向けると、金色の目をした黒猫が涼しい顔で振り返っていた。 「ああ!? なんだあの猫! 危ないだ……」 その時、ブオンと鼓膜を破らんばかりの騒音が耳を掠めた。改めて進行方向を見てみる。目の前は横断歩道で、信号は赤だった。 「……全然気づかなかったね…………」 「あ、ああ…………」 そういえばあの猫、今、どこから来たんだろう? 近くには飛び降りられるような塀も何もないのに。もう一度右側を見てみる。しかし、もう、そこに黒猫の姿はなかった。
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