みずいろ金魚

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みのるは窓の外を ちらりと見ました。 太陽はもうすっかり沈み ただゆさゆさと 木のかげが恐ろしげに揺れているのが見えるばかりです。 今夜は嵐になるかもしれないと さっき出かける前にママが言ったのを思い出していました。 となりに座っている小さな妹 くるみは お気に入りのうさぎのぬいぐるみを抱きしめたまま ソファから動こうとしません。 「だいじょうぶだよ くるみ。お兄ちゃんがついてるから 怖いことなんてないさ」 パパとママは急に用事ができてしまい 夕ごはんのあと 出かけてしまいました。 「みのる くるみをお願いね。そんなに遅くならないようにするから」 ママは心配そうに言いましたが もうずっと前から 妹を守るのは自分の役目だと みのるは ちゃんとわかっていました。 けれどくるみは うさぎを抱いたまま 泣きそうな顔です。 外ではうおーんと 風がうなりはじめました。 「ママがいないと いやだ!」 くるみの言葉が みのるの胸をひんやりとさせました。 ―――ぴちょん。 水の音。 玄関においてある、金魚ばちでしょうか。 1年前 くるみが おねだりして買ってもらった、きれいな赤い金魚。 みのるは その金魚をこの部屋にもってきてやろうと思いつき 走り出しました。
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