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お気に入りのネイル
最近ハマっているスイーツに音楽
そんなの、毎日聞かされすぎて完全熟知だし
……大体、お前の言うお気に入りの音楽って
俺の、この車で聴いたやつだし
車は海に向けて走り出す。
「ねぇ、彼女作らないの? 」
「めんどくさい。いらない」
「あ。樹の場合は 作らない んじゃなくて 作れない のか」
「勝手に言って勝手に納得すんな」
(誰のせいだと思ってんだよ)
海沿いを走っているのは俺らだけ
どこまでも続けばいいのに。
彼女が眠そうにあくびをしたから、
適当な所で車を停める。
「着いたぞ、降りるか? 」
「ううん、降りない……」
(せっかく来た意味……)
電話を掛けてきたあのテンションはどこへやら。
エンジンを切ると途端に静寂と闇が俺らを包む。
「旦那と喧嘩でもした? 」
「……うーん。
なんで分かっちゃうかなー」
「何が原因? 」
「……樹には隠せないなぁ……
あのね、嘘。
嘘、付かれたの。
悠生にとっては大したこと無い嘘だったかもしれないんだけどさ……
私には、……けっこうショックだったんだよねぇ……
今夜もね、帰ってこないの。……仕事、なんだって。
あ、やば。
ちょっと泣けてきた……
悔しいな、アイツのことで泣くとか、私……。
ごめん、泣くつもりなかったんだけど。
白けちゃうよね。
やっぱり、帰ろっか。
……え、樹? 」
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