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この香椎丘高校に三浦も進学したという噂は聞いていた。
香椎丘高校に入ってからの僕は背が急激に伸び、常に一番先頭だった中学生時代の面影は無くなっていった。
水球部に入った僕は日々を暑い日差しのもと過ごした。おかげですっかり逞しくもなり、いつしかあれだけ描いていた漫画も描かなくなっていた。
僕は中学時代から変わっていた。
そして、クラスメイトだったあの明るい三浦香苗のことは次第に忘れてしまっていた。
この春、3年生のクラス替えでまだ浮わついた教室の中、先生は最初の出席をとっていた。
「三浦香苗」
「……はい」
その名前とあまりに小さく暗い返事に、僕は声のした方へ顔を向けた。
あの三浦?
だが、教室の真ん中あたりから聞こえた声の出所付近にあの三浦香苗の闊達な表情は見当たらなかった。
声の付近には顔を伏せた女子が座っていた。
ずっと下を向いていて、表情は見えなかった。
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