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2. 遠夏
三浦と話す機会はなかった。
僕が話さないのではなくて、三浦は誰も近寄らせない雰囲気を纏っていたからだ。
とうとう1学期は暑さとともに過ぎていった。
恋をしているわけではない。
ただ、あの頃の僕を嬉しい気持ちにさせてくれた三浦香苗がどこへ行ってしまったのか。それだけはずっと気になっていた。
その夏の太陽はとても白かった。
まさに白日のもと、僕らはプールでボールを追い、身体をぶつけ、最後の大会に身を投じていた。
水を飲みながら懸命に泳ぎ、渕上も普段は見せない真剣な顔で声を出したが、僕らの夏は蝉の声が途絶えるより早く終わりを告げた。
「あーあ。終わった実感なかねー」
渕上がバッグのショルダーベルトを額にかけて前を歩いている。
「ん、まあね。しゃあなかよ」
「こげん時に彼女おったらなぁ。なんで中道と歩かないかんとやろか」
渕上がやれやれというように両手を広げる。
「そりゃ、こっちの台詞たい」
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