2. 遠夏

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 部活が終わってしまうと、ここまで手持ち無沙汰になるとは思っていなかった。  母は勉強しなさいよの一点張りだが、どうしてもダラダラしてしまう。 「勉強もせずにテレビ観てるんなら、家のこと少しは手伝いよね」  ということで、毎日スーパーへ食材の買い出しに出かけることが夏休みの日課となった。 「人参、キャベツ、ネギ、豚肉の細切れ……野菜炒めかよ」  ひんやりする野菜コーナーを歩きながら呟いていると、目の前で買い物をしている母親に小さな子供が駄々をこねていた。 「コーンがいい。幸太、コーンが食べたいとよ」  小さな子が若いお母さんの袖を引っ張っていた。口を尖らせていて可愛らしい。 「コーン、高いけんねぇ。うーん、でもいっか。幸太の好きなバターコーンにしよう!」 「やったー」  小さな子が小躍りしていて、若いお母さんは頭を撫でた。微笑ましく見ていた僕は、その横を通り過ぎてキャベツを手に取った。ふと、ほんの少し見えたそのお母さんの横顔に心臓がとくんと揺れた。僕はその親子のほうを振り返った。 「……三浦?」  若いお母さんと思った背中はやはり三浦だった。  三浦は買い物かごを持ちながら、僕の顔を見て、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。  隣で「お姉ちゃんのお友達? ねえ?」と、屈託なく訊ねる小さな子の声だけが店内に響いていた。
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