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パンパンに膨らんだ買い物袋から長ネギの緑の部分が顔を出していた。 「重かったんだからね」 少しだけ頬を膨らませてみせた亜美ちゃん。 可愛らしい表情でかなり好きだ。 「だよね?重そうー、持つよ」 亜美ちゃんの手から袋を受け取った俺の肩は、予想外の重さにガクッと下がった。 肩が外れたかと思った。 なんだよ、スゲー重い。 「亜美ちゃん、力持ちだね。もしかして、ずっとこれを持って待ってたの?」 「うん、誠也くんを驚かせたくて」 もう、十分に驚いてるよ。 「あー、ラインしてくれたら良かったのに」 そしたら、早ければ焼き肉なんかたべなかったし、遅ければ、もう食べたからって言えたのに。 「大丈夫よ、私、力もあるし、待つのも平気」 「いや、でもさ」 「ラインしてるより何より、お腹をすかせた誠也くんに早く食べさせてあげたくて」 「... ... 」 言えない。 とても言えない。こんなに思われてるのに『もう食べた』とか言える奴の気がしれない。 「お腹減ったーーって、いつも言ってるでしょ?一刻も早く食べさせてあげたくて、すき焼き」 「す、すき焼き?」 はち切れそうな腹なのに、よりによって『すき焼き』 「好きでしょう?お肉も沢山買ってきたから」 好きだ。すき焼きは、好きだけれども。 俺の口に酸っぱいものがあがってきた。 ごくりと飲み込んで、亜美ちゃんを見つめた。 亜美ちゃんが好きだ。好きだけれども物事には限界がある。 「あ、ありがとう。でもさ」 俺の腹は、既に限界。 悪いのは、こんなになるまで食べた、さもしい俺だ。 「ごめん!亜美ちゃん」 俺は、亜美ちゃんの優しい気持ちに応えられそうにもない。 なんせ、腹がパンパンなんもんだから。 腹を擦りながら、亜美ちゃんに頭を下げた。
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