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意を決して、亜美ちゃんを見た。
「あーお腹すいたね。早く作るね」
やはり、亜美ちゃんは、まだ夕食を食べていないのだ。腹ペコの状態なのに、わざわざ俺とすき焼きを食べようと食材まで買ってきてくれたのだ。
「もしかして」
「え?」
「もう食べちゃったとか?」
うるうると潤んでみえる亜美ちゃんの綺麗で純粋な瞳が俺をまっすぐ見上げている。
腹ペコな亜美ちゃんは、自宅へ帰らず俺のところまで、わざわざ重い思いをしてきてくれた。
しかも、さむいのに廊下で俺の帰りを待っててくれたのだ。
腹ペコの亜美ちゃんが待ってるとも知らない俺は、もくもくとした焼き肉屋で肉をアホみたいに焼いてバカみたいにかっくらってきたのだ。
後悔の念にさいなまれていた。
バカな俺には、もったいないくらいの優しい彼女だ。
「... ... え?い、いやあ、まさか。腹ペコだよ。ペコちゃん状態」
俺に出来ることは、下手な嘘をつくことぐらいだ。
「ほんと?良かったあ、食べちゃってたらどうしようかと思って」
ホッとしたように息を吐く亜美ちゃん。
「全然、全然、食べちゃってなんかないから。あー、すき焼き楽しみ」
鍵を開けて、亜美ちゃんを家に入れた。
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