交錯

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「あぁ、退屈だ」 俺(金門商斗(かなもんあきと))は気怠そうに椅子に身体を預け、つい先程まで向かい合っていたパソコンを見つめ呟いた。 「続きやるか」 商斗は日本でも屈指の大企業、金門商事の社長の一人息子として産まれ幼い頃から跡継ぎとしての英才教育を受けて来た。 カタカタカタカタ 余計な事を考えない様にと、無心になりキーボードを叩く。 「はぁ、飽きた……帰るか」 椅子から立ち上がりカバンに手を伸ばしながら左手の腕時計に目を向ける。 「まだ朝の10時か…まあいっか」 出社して2時間しか経っていないというのに退社して行く商斗を見ても周りの社員は何も言えない。 何故なら商斗は22歳という若さで千人以上の部下を持つ1部門の執行役員に僅か入社3ヶ月で抜擢されていたからだ。 当然現社長の父親の影響もあるが、彼自身の持つ並々ならぬポテンシャルの高さによって商斗の倍以上の年齢の幹部社員も彼の実力を認めている。
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