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「厄介なのは恐ろしいほどの中毒性だ。一度舐めたら,もう戻れないそうだ。しばらくすると禁断症状が出て,意味もなく笑い続けたかと思うと嘔吐と下痢が止まらない。そしてどんどん痩せ細って行って最後は餓死だ」
「ただ餓死ってだけなら,まだ身内の話で済むのかもしれないが……中毒以上に厄介なのは,姥魂様を口にした人間は姥魂様に心も身体も乗っ取られてるって話だ……。正直,うちの親父が乗っ取られてるのかは,動かないし見ててもわからねえ。だけど,神山さんからは必ずドアにカギを掛け,窓も外から木で塞いで出られないように、誰も部屋に入れないようにしておけって言われてる」
「で,昔の話だが,姥魂様の話が京の都にも知れ渡ったそうで,当時,京都の偉い坊さんたちが姥魂様を鎮めるためにこの村に派遣されたそうだ」
「かなり効果があったみたいだが,昭和に入ってから戦争もあったせいだろうけど,しばらく姥魂様を鎮める坊さんの派遣がなくなった。その頃にウバタマ様として一部の連中に知れてしまい,騒ぎになったんでまた京都から坊さんが送られてきたそうだ」
「神山さんの前にも坊さんがいたそうなんだけど,神山さんはもう30年近くこっちにいるそうだ」
繁と勝は一気に姥魂様のことを聞かされ圧倒された。
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