ウバタマ様

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「なるほどなぁ。でも,俺が思うに結局のところ,ウバタマ様ってキノコじゃねぇのか? 山んなかに生えてて,喰ったらハッピーになるんだろ?」 「もしキノコだったら勝でも簡単に採れるな。楽勝だ」 「ベニテングダケで鍋やった隆司に言われたくねえな」 「おお……あの時のメルヘン鍋か。あれは見た目の女子受けがハンパないからな」 「なに言ってんだ,ちょっと喰って泡吹いてぶっ倒れただろ……お前」 「確かに……ちょっとだけ夢の国に行った……あの時,俺は……」 「あん時,隆司の母ちゃんが激怒してたじゃねえか。ベニテングダケなんてガキの頃から喰っちゃいけないって言われてんのに。あんな派手なキノコ,間違える訳がないって。絶対わざとだって」 「俺の兄貴は隠れて友達としょっちゅう喰ってたぞ。乾燥させて粉にしてカップラーメンに入れてんのを何度も見てっから」 「隆司の兄ちゃんなんて,シンナー大好きなドヤンキーじゃねえか」 「ああ……バカ兄貴のせいで,昔っからいろいろ大変なんだ,うちは」 「そういえば何年か前に,長野県の山奥でマリファナ・イベントやって逮捕されて新聞に載ってたよな。お前の兄ちゃんとその友達たち」 「ああ。初犯だとか,主犯グループじゃないとかで,普通に家に帰ってきたけどな。その年の夏に裏の畑でブットイ大麻を育ててたよ」 「で,その弟はウバタマ様で一儲けしようってか」 「おう,勝は参加するだろ? 繁はどうよ?」  繁は冷たくなったメザシを口に入れたまま,誰も観ていないテレビの画面を眺めていた。 「ああ……俺か。俺は暇だし,ウバタマ様探しやるよ。勝はやんないのか?」 「繁がやるなら,俺もやるよ。マジでそんなんで大金ゲットできたらオイシイしな」  三人はカチカチのメザシをしゃぶりながら,小さな電球の灯りの下で空が明るくなるまで呑み続けた。  やがて夜と朝の境目になると,三人とも潰れるように眠りについた。
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