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「……だけど、君は普通の人間じゃない。僕の家族だ。鬼の血を引く、化け物だ。だから、これまでも人間の輪に入れなかった。何年も迫害され続けてきた。ずっと独りぼっちだった。違うかい?」
昊千代の尖った言葉が、美邑の胸をちくりと刺す。だが、手のひらの温もりを確かめ、すっと息を吸う。
「――確かに、あたしには家族とモモ以外、なにもないって、そう思ってた。ずっと怖がられてたし、新しい環境でさえ、本当の友達を作れずにいた」
それが、自分のせいだけだとは思わない。美邑を「化け物」と呼び、必要以上に忌避し続けていた同級生たちとは、やはり仲良くなれるとは思えない。
だが、それでも。一歩進むのだと、扉を開けるのだと、そう決めたのだ。モモのために――なにより、自分のために。
「あたしは変わるの。少なくとも、自分を好きな自分に変わるんだって、そう決めたの。他人の顔色うかがって、へらへらしてその場をしのぐことを、止めにするの。胸を張って、そしたら――もしかしたら。そんな私と仲良くしてくれる人が、増えるかもしれない」
後半は、自然と理玖を見ながら言っていた。理玖の頬が赤くなり、そっぽを向く。それにくすりと笑うと、昊千代が「なんだよ、それ」と低く呟いた。
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