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「父様と母様の墓に寄生している草っぱごときが、良い気になって口を挟むなよ」
「昊千代さんっ!」
あんまりな言いぐさに、美邑が声を上げるが――朱金丸は静かに「そうだな」と頷き、美邑を制止した。
「俺は所詮、紛い物に過ぎん。それは、こいつが証明している」
そう言って、朱金丸は顔の紋様に触れた。
「だから、俺はおまえの望む家族には、なってやれなかった。すまない」
朱金丸の言葉に、昊千代の顔が歪む。そのまま、吐き捨てるように言い放った。
「知らないよ。僕は、君が嫌いだし。父様の名前をつけられて、二代目だなんて言われて。君に家族になってほしいだなんて、言ったこともない」
「そうだな」
あくまで、朱金丸は冷静だ。無表情に、こくりと頷く。
「大体、君はなに考えてるかよく分からないし、父様の残滓は、僕にはちっとも会いに来てくれないのに君にばかり印をつけるし。君も、美邑のことばかり気にかけて。君なんて……っ」
憎々しげに言い募っていたはずの昊千代の声に、震えが混じり始める。その様子に、美邑はぎゅっと胸が苦しくなった。なにか言わなければ、と思ったときには、言葉が口をついていた。
「でも……トモエさんは、言ってたよ。朱金丸さんのこと……トモエさんと初代の朱金丸さんの、三人目の子供みたいなもの、だって……」
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