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「……なにもされてないけど、さ。先生に報告したって、冗談だと思われそうだから。だったら、正体が分かればまだ自分で身の守りようがあるかなーって」
「まぁ……確かにな」
本当に納得しているのか、それとも流しているだけなのかは分からなかったが、理玖が頷いてみせたため、美邑もそこで話を切り上げた。
体育での澤口の目が。理玖の呟いた言葉が。胸をしつこく突き回す。
――化け物。
――仲間なんじゃねぇの?
(止めて……)
目をつむり、自分の頭に呼びかけるも、言葉は壊れたCDのように繰り返し続けられる。
ピックに刺さったミニトマトを、小さくかじった。ぷつりと弾けた実からは、どろりとした青い薫りの液体が流れ出した。
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