商店街と猫とアンティーク

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歩いてすぐの商店街の隅っこに小さな小屋が立ててある。愛嬌のある招き猫の像と「招ふく招き猫」と書いた札があり、商店街の猫を保護するために募金を集めていた。商店街で猫の世話をすると聞いた時、私は反対だった。街が汚くなるしトラブルも増える。そう思っていた。 さっき女の子が支払った巾着の代金を募金箱に入れた。 そういえば前に誰かに聞いた「猫は幸せな場所を知っている。幸せな場所に訪れ、幸せに包まれて眠る」って。誰だったかねぇ。あれは…そうだ!夫だ。忘れていた。色々な事を。もしかしたらあの猫は、商店街の幸せを知っているのかもしれない。 「おっ!黒木さんじゃない!」 後ろから懐かしい声が聞こえた。同じ商店街で床屋を営む緒方さん。 「最近顔みないから心配してたとよ。また集まりで飲みましょうや」 商店街の集まりにももうずっと顔を出していない。今度久しぶりに顔を出してみようか。商店街は思ったよりも人通りに溢れていた。いつの間にか人も笑顔も戻ってきていた。なんで気が付かなかったんやろ。 さてと、帰ろうかね。帰り道、路肩にたんぽぽが綿をいっぱいに広げていた。勢いをつけてつま先で蹴った。若いあの頃のように。 お店に戻るとドアの前にあの猫がいた。黒いしっぽと緑の目がずっとこちらを見ている。やれやれ仕方ないねぇ。笑顔を見せると、 ゆっくりと、ゆっくりと、店内の様子をうかがいながら、私の後をついてきた。 誰もいない私の隣の椅子にひょいっと飛び乗った。椅子の感触を確かめて、丸くなる。しっぽが静かに揺れている。新しい時を刻むかのように。image=510068864.jpg
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