商店街と猫とアンティーク

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日差しの温もりに誘われて、いつの間にかウトウトしていた。なんだか夢の中で心地よい声が聞こえる。あれ、夢じゃないみたいだね。ゆっくりと目を覚ますと、外から若い女の子の高い声が聞こえる。懐かしい響き。学生時代に戻ったよう。そっと小鳥に近づくように、外をのぞきこんだ。 そこには女の子がふたり。と、いつもの猫。女の子たちは制服を着ている。高校生ぐらいやろか。猫をさすりながら楽しそうに会話している。猫の表情もいつもと違ってちょっと楽しそう。いつも興味なさそうなのに。 「あっ!こんにちは。猫ちゃんかわいいですね」 私に気付いた女の子がこちらを振り返る。もうひとりと猫も私の方を向いた。みんな猫に見えた。自由奔放で、どこにでも、どこまでも、行ける猫たち。 「うちの猫じゃないんだけどねぇ」 期待を裏切らない返事をしたかったけど、気持ちがにじみ出てしまった。 「そうなんですね。じゃあ、街でお世話している猫ちゃんかな」 「あとで募金しにいこうや」 楽しそうに会話がはずんでいる。ふたりと猫だけの世界に戻ったようだ。私も元の世界に戻ろう。
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