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「……入れ」
「ごめんなさ……え?」
再び静かに背を向けて、部屋の中へと入っていくその後ろ姿をボケーっと見つめれば、
「なんか…思いのほか上手く行きそうで良かったです。あとは蘭殿に託して、私はこの辺で失礼します。後ほどお迎えに上がりますので」
「え……待って!」
フッとちいさくわらった虎太くんが私にクルリと背を向けると早足に立ち去る。
その後ろ姿を見つめながら思う。
「お、置いていかないでよ……」
今にも消え入りそうな声で呟いてみても、長い廊下の先を歩く虎太くんはもちろん振り返ったりしない。角を曲がる虎太くんを見送れば、すぐにその足音すら聞こえなくなった。
「おい、蘭。早う来い」
―――ドクン
代わりに聞こえるのは先に部屋へ入り、既に腰を下ろして私が部屋に入るのを待っているらしい紅蓮様のよく澄んだ声だけ。
……って、
呼び捨てかよ!!!!!!
しかもドクンってなんだ、ドクンって!!
違う、断じて私はときめいたりなんかしてないんだから。
急に名前を呼ばれて少しビックリしただけで、絶対にときめいてなんか……
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