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「し、失礼します」
言われるがまま、紅蓮様の部屋へと足を進めれば、障子を閉めろと顎の先で指図されて少しムッとする。
本当にこの人は光蓮様の息子なの?
本当に気に障る嫌な奴!!!
障子をスっと閉めて、そのまま入口に一番近い場所に腰を下ろせば、一瞬紅蓮様が目を見開いた。
何?私変なことでもした?
「変な女だな」
「は?」
「先に行っておく、俺はお前みたいな阿呆づらには微塵も興味がない。気があって部屋にあげたわけじゃない、変な気は起こすな?」
笑うでもなく、怒るでもなく、ただ淡々と紡がれる言葉が、やけに私の耳に響く。
「なんで?」
「俺は愛だの恋だのに興味はない」
「そうじゃなくて……そうじゃなくて、紅蓮様はどうして泣いてるの?」
目の前で胡座をかき、胸の前で腕組みしている紅蓮様は、相変わらず無表情で何の感情も読み取れないけれど、
「……っ、泣いている?俺が?」
ヒシヒシと痛いくらいに、私の中に流れ込んでくる悲しい感情。
不思議な感覚。
だけど、分かる。
この感情はきっと、目の前でどうってことない顔して私を見つめる紅蓮様のものだ。
強気な態度の裏側で、誰にも言えず一人泣いているんだ。
なぜだろう、そんな気がして仕方ない。
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