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目の前に広がる光景に息を呑む。
だだっ広い部屋の中、ズラリと何列にも並んで座る人々に私は空いた口が塞がらない。
「蘭殿、こちらへ」
列の1番前のど真ん中には光蓮様が座っていて、その右隣には、きらびやかな着物に身を包んだ女性が2人、そして左隣には相変わらず何を考えているのかサッパリ分からない紅蓮と、光沢がある淡い青地の凛々しい袴を身にまとった爽やかな男性が1人。
まるで紅蓮とは正反対だ。
私は楓さんに付き添われながら、光蓮様に言われた通り、この30帖は余裕でありそうな部屋の1番手前にある小上りスペースへと足を運んぶ。
小上りへ登れば、この部屋にいるみんなの顔が見渡せた。
ざっと30人はいそうな部屋の中で、ドクドクと心臓が暴れるのを感じ、今にも色々吐いてしまいそう。
私から皆が見えるように、皆から私も丸見えなんだろう。そう思うと、何ともこの高さのある小上りはありがた迷惑な場所だ。
こんな場所に私を登らせて光蓮様はこれから何を行うつもりだろう。
せめて、事前に教えてさえくれたらこんなに取り乱さずに済むのだけれど。
光蓮様は、小上りの上に静かに腰を下ろした私を見て満足そうに頷くと、顎の先で部屋の入口にいた男へと合図を送る。
その仕草は、さっき私が部屋へ入ったあの時の紅蓮とそっくりで、
あぁ、やっぱり親子なのだと納得するのに時間はかからなかった。
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