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───ビューーーッ
北風が大きく吹き荒れて、木々に降り積もった雪が一斉に舞い上がる。
あぁ、無理。
だめ。
やめて。
冷たい風と雪を吸い込んで、私の肺まで冷えて来たような気がする。
極寒の地に生まれて17年。
やっぱり、寒さにはめっぽう弱いみたいだ。
「御守り買ったら真っ直ぐ帰ろ」
風邪をひいちゃ元も子もないもんね。
なんて、御守り売り場まで歩き出した私は、突然 寒さを一切感じなくなった。
いや、むしろ心地よくて暖かい空気に包まれている気さえする。
───なに?
紅い蜃気楼の中にいるみたいに、クラクラと歪む景色。どう考えてもありえないこの景色を、どうにか正当化しようと冷静に考える。
……あぁ!私ってば熱でもあるんだ、きっと。
寒いとは思ってたけど、そこまでとは思わなかったな。まさか紅い蜃気楼が見えるなんて。
いや、待てよ?寒さのせいで蜃気楼が見えてるだけかもしれない。
きっと、そうだ。
───涼風家の血を引く巫女よ。
……え。
何、今何か聞こえなかった?
───紫黒の巫女よ。
ドクンドクンと心臓が音を奏でて、冷や汗にも近いものが体からじわじわと出ているのが分かる。
だって、聴こえる。
誰かが、間違いなく私に向かって呼びかけている。
巫女とか、紫黒とか良くわかんないけど、なぜか自分に向けられた言葉のような気がして、
胸がザワザワする。
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