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「父上。……蘭を、我が妃として東雲家に迎え入れたい」
「……は?」
……さっきも紅蓮の部屋を出る時に言ってたっけ。
あの時は楓さんにやんわりと話を変えられて、バタバタと部屋を後にしたけれど。
……まだ、諦めてなかったの?
ていうか、ヒメって、何?
やけに真面目な顔で光蓮様を見つめる紅蓮の横顔に、ドクドクと心臓が壊れそう。
「早く妃を迎え、3代目としてのお披露目式をするようにと、父上も常日頃仰っておられることです。……悪い話ではないかと」
部屋で話した時の紅蓮を思い出して、今目の前で冷静に話をする紅蓮に違和感を抱いてしまう。
堅苦しい話し方のせいなのか、
それとも、何を考えているのかサッパリ分からないその瞳の冷たさなのか。
「東雲家にとって、1番信頼のおける東里家に娘ができた今、蘭を妃として傍に置くのが私にとって最善だと判断いたしました」
紅蓮って、どんな人なんだろう。
冷たい瞳とは裏腹に強引だったり、くだけた話し方の時は少しだけ近い存在な気さえしてしまう。
この男は、本当はどんな人なんだろう。
……出会って間もないけれど、私の知っている紅蓮という男は、どこまで本当で、どこまで偽物なんだろう。
そんなことをふと考えてしまう。
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