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きっと紅蓮も、寝てないような気がしてるだけで実際のところは
「寝ちまったら、もう朝が来ねぇんじゃねえかって。俺が俺じゃなくなっちまうんじゃねえかって。そう思うと、寝るのが怖い」
「っ……」
「だから、夜は嫌いだった。すげぇ長くて、……暗くて」
紅蓮の言葉に、さっきまでの自分の浅はかな考えはすぐに捨てた。
紅蓮は、本当に……眠れない毎日を送っていたんだろう。眠いせいなのか、弱音をポロッと零した紅蓮に胸が引き裂かれるように苦しくなって、
思わず紅蓮の腕をギュッと抱きしめる。
「でも、お前が側にいると何でかすげぇ眠い。……明日の朝、ちゃんと起こせよ?"俺"を」
紅蓮の気持ちが痛い。
すごく苦しい。すごく悲しい。
……寝るのが怖いなんて、そんなこと……
私は考えたこともなかった。
どんどん目頭が熱くなって、瞬きと一緒に私の頬を熱い涙が流れていく。紅蓮に気づかれないように、平然を装って答える私の声は
「っ、仕方ないなぁ。……ちゃんと寝相よく寝てよね?」
震えていなかったかな。
あんなに緊張して、嫌だと思っていた紅蓮と同じ布団、紅蓮の腕の中。
だけど、紅蓮の言葉を聞いた今、
私がいることで少しでも紅蓮にとって、プラスになるなら、毎日でもこうして眠りたいなんて思っている。
紅蓮なんか、嫌いなはずなのに。
なのに……どうしても放っておけない。
多分、私はマリア様並にお人好しだ。
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