無い

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 本当の事を言いだせないままで、水族館の駐車場に付いてしまった。  駐車場内には多くの車が止まっていたが、もう開館してから暫く経っている事もあり、人はまばらだった。  俺は車から降りるのを躊躇していた。しかし、そんな俺に気付いていないのか、由紀乃の方が何やら慌ててドアを開けた。  そのただやらぬ雰囲気に俺が由紀乃を目で追うと、由紀乃が駆けていった先に、オロオロしている老人がいるのが目に入った。  俺もゆっくりと車から降りて、そこへと歩を進めた。  恐らく、倒れているのは、この老人の奥さんだろう。 「過呼吸ですね。落ち着いて下さい」  その症状が何なのかすぐに分かったのは、彼女が看護師だからだ。  俺は取り敢えず踵を返して、まだ由紀乃のバッグの中にあったそのコンビニ袋を手に取った。 「これ、被せたら治るんじゃないか」 「バカ!ペーパーバック法は危険なの」  そう怒鳴ってから、由紀乃はその老婦に必死に話しかけていた。  そんな時俺は、そうか、良くドラマとかで見る、過呼吸の人にビニール袋を被せるのって本当はダメなんだ、などと冷静に考えていた。
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