優しい嘘

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病は気からと言うが、父は日に日に元気になっていった。 このまま、完治するんじゃないかと言うくらい。 とは言うものの、嘘を吐き通す事は楽ではなく、不意に感情が溢れ出そうになるのを抑えるのが大変だった。 父が余命宣告を受けてから、1ヶ月が過ぎた頃。 父が体調も良くなったから、海に行こうと唐突に言い出した。 海どころか、家族揃っての外出なんて何年振だ? そういう訳で なんとか、皆んなの都合を合わせて、昔良く行った千葉の海に、1番上の姉の運転で一家で日帰り旅行をした。 まだ、陽は強いものの9月に入ったばかりの海はクラゲも多く、海の家も既に店仕舞いしていて、海水浴客も居るには居るがまばらだった。 泳ぐ気になれるような感じじゃ無い。 まあ、元々誰も泳ぐ気など無いがーー。 水着も持って来ていないし。 車椅子を1番末の妹が押し、父を連れて出来るだけ海に近い場所まで向かった。 私は長女に付き合い、車を停めに、海岸から少し離れた所にある駐車場に向かった。
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