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余命3ヶ月の父は結局1年近く生きて、最後も末期の癌にしては苦しまずに旅立って行った。
父の納骨が終わり、なんとなく肩の荷が下りた気がした。
これでもう父に嘘を吐かなくて済む。
「ーーなんとか、最後までお父さん騙せたね?」
「そうね、一時はバレるかと思ったけど」
私達はそう言って笑った。
「あんた達意外と馬鹿ね?」
お母さんが笑って言った。
「え? 何がよ?」
「父さん全部分かってて、あんた達に騙されてあげてたのよ? 菜絵、あんた嘘吐くと右の眉毛がピクッて上がるんだって。父さんが言っていたわよ」
「えっ!?」
私は思わず右の眉毛を触る。
私にそんな癖があるなんて、自分自身でも知らなかった。
「先生は?」
「先生もグルよ」
実は、騙されていたのは私達であった。
まんまと最後まで騙されたのだ。きっと、最後だって本当は苦しかったに違いない。
私達に別れの言葉だって言いたかったろう。
日に日に元気になって行くように見えたのも、全ては私達を欺く為の芝居だったのだ。
私達は気付くとその場で泣き崩れていた。
「父さん最後に誇らしげだったわよ。最後まで、あんた達を騙し通すのが、最後の自分の役目だと思ってたみたい。頑張り過ぎて、余命も凄く伸びたわ。ほんと良いお父さんだったわ。まあ、自分も沈んだ雰囲気になるのが嫌だったんでしょうね」
そう言うと、母は姉妹1人ずつの名前の書かれた父直筆の手紙を一人一人に渡した。
そこには、何ページものダメ出しが書かれていて、最後に
ーーお前達の父であれて良かった。ありがとう。
と締めくくられていた。
終わり
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