わたしはおちる。

1/7
前へ
/7ページ
次へ

わたしはおちる。

 わたしは落ちる。  学校の屋上から落下する。  彼の姿がどんどん遠くなる。  わたしは墜ちる。  学校の校庭が近付いてくる。  彼の顔が陰となって、その表情はもう見えない。  衝撃。意識の消失。暗転する世界。  わたしは死んだ。  でも、わたしはここにいる。  わたしのぐしゃぐしゃになった身体――自分の死体の前で腕を組んでいる。  死後の世界ってあったのね。  痛みも感じる暇がなかった。一瞬で世界が変遷した、そんな感覚。  でも、ま、これで。  わたしはくつくつと笑う。愉快な気持ちになっていた。  彼はわたしのこと一生忘れられないでしょう。  愉悦から恍惚へ。わたしは熱く吐息した。  わたしは自殺した。学校の屋上から飛び降りた。  切欠は些細なことだった。死ぬほどのことではない、大半の人はそう言うだろう。  思春期の高校生が誰でも体験する甘酸っぱい恋愛。そんな恋の縺れた痴情。訪れた悲しき結末。単純に言えば、失恋した。  ただ、わたしは精神的に弱かったのだろう。精神的におかしくなっていたのだろう。     
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加