わたしはおちる。

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 彼との関係が終わることに納得しなかった。そんなことは絶対に認められなかった。だからわたしは彼に縋り付いた。完全なる偏執狂だった。  警察にも呼ばれたっけ。  彼からの通報でわたしは連行された。ストーカー規制法に触れるんだと言われた。高校生だから厳重注意だけだったけど、それは学校内にも波及して大問題になった。  病院にも通ったっけ。  親からの懇願でわたしは通院した。典型的な共嗜癖なんだと言われた。高校生だからカウンセリングが中心だったけど、たまに飲む薬で躁状態になって学校で暴れて大問題になった。  その時点でわたしには既に生きる気力がなかったんだと思う。  彼のいない世界になんて興味がなかった。視野狭窄、近視眼。まさしく蛸壺化。わたしにとって世界の全ては彼だったから。  でも、わたしが死んだら、きっと彼はわたしのことを忘れてしまう。それが恐ろしかった。怖気が走るほどに嫌だった。だから素直に死ねなかった。彼には、わたしのことを生涯覚えていて欲しかった。  そしてわたしは一つの方法を思いついた。思いついた、というよりも思い出した。幼少の頃、どこかで見たか、どこかで読んだか。そう、わたしのこと――わたしの記憶を彼に刷り込む方法。連想結合記憶。  わたしは彼の前で自殺することにした。     
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